【陸前高田FW2022】フェアトレード商品LISAチョコレートを支援
2022年度の地球市民学科「陸前高田フィールドワーク」(指導教員:安斎徹教授)では、1年間かけて有限会社ネパリ・バザーロが作っているフェアトレード商品であるLISAチョコレートの支援に取り組みました。
ネパリ・バザーロは、ネパールの子どもたちの育成と女性の自立支援を目的として1991年に活動を開始しました。以来、顔の見える関係を大切に、強い信頼関係に基づくパートナーシップを築きながら、ネパールのハンディクラフトや食品の企画開発、被災地支援の商品の製造、沖縄でのカカオ栽培プロジェクトなど様々な取り組みを行っています。
LISA(Low Input Sustainable Agricultureの略、低投入持続型農業)とは、農薬や化学肥料、石油エネルギーの使用を抑え、自然生態系の力を活かし、収量を維持しながら高い品質を目指す持続可能な農業のことです。ネパリ・バザーロのLISAチョコレートは、3.11の大津波で壊滅的被害を受けた陸前高田で復興支援として開設した工房でインドのカカオや沖縄の黒糖などを材料に作られています。
1.LISAチョコレートの販売促進策の提言
2022年度前期には、ネパリ・バザーロの土屋春代氏から2度にわたりお話を伺い、ネパリ・バザーロやLISAチョコレートに関する理解を深めながら、LISAチョコレートの販売促進策を3つのグループに分かれて検討しました。2022年7月3日に、地球市民かながわプラザにあるフェアトレードの店ベルダを訪問し、有限会社ネパリ・バザーロあてにフェアトレード商品であるLISAチョコレートの販売促進策を提言しました。販売方法の工夫、SNSによる発信、わかりやすい説明資料の作成、ギフト用としての需要喚起、作り手と買い手の双方向コミュニケーションの実現などを提案しましたが、ネパリ・バザーロからは「1つひとつのアイディアから、私たちが商品を通してどんな社会を実現したいのか、何を大切にしているのか、ということへの共感が伝わってきて、とても嬉しく思った。商品を通して、人と人がつながるアイディアには若さと素直な感性が溢れていて、とても刺激的であった」という講評をいただきました。
2.陸前高田訪問
8月31日から9月5日まで岩手県陸前高田市を訪問しました。「陸前高田フィールドワーク」は2020年度に開講され、これまで「バーチャル・フィールドワーク」の実施(2020年度)や冊子『陸前高田SDGs物語』の作成(2021年度)などに取り組んできましたが、コロナ禍で現地訪問は叶いませんでした。今回、ようやく現地訪問が実現しました。
1日目は陸前高田市役所で政策推進室の松木翔氏より「それは、私たちが目指す未来」という講義を受講しました。陸前高田市の現状、東日本大震災の被災の状況、岩手県で初めての「SDGs未来都市」認定、SDGsを通じたまちづくりなどについて、丁寧にご説明いただきました。2日目は製油&チョコレート工房「椿のみち」を訪ね、LISAチョコレートの製造過程の一部を体験しました。丹精こめた製法に込められた「椿のみち」の皆さんの思いに触れることができました。3日目は一般社団法人マルゴト陸前高田にアレンジいただいた「震災学習プログラム」を体験し、東日本大震災津波伝承館、高田松原、奇跡の一本松、震災の教訓を伝承する気仙中学校などを巡りました。4日目は陸前高田市観光物産協会の方のガイドのもと「みちのく潮風トレイル」を歩きました。5日目は有機・循環型社会をテーマとした体験型の農業テーマパークである「ワタミオーガニックランド」でアオダモなどの植樹を行いました。6日目は東京への帰路、世界遺産である中尊寺に立ち寄りました。
3.動画の作成
2022年度後期には、陸前高田への現地視察で撮影した動画を編集し、陸前高田市観光物産協会あてに「みちのく潮風トレイル」の紹介動画、ネパリ・バザーロあてに「LISAチョコレートができるまで」の説明動画を作成しました。12月23日に改めて地球市民かながわプラザにあるフェアトレードの店ベルダを訪ね、撮影を行い、「LISAチョコレートPR動画」を作成し、公開しました。
4.「エコプロ2022」でのボランティア
12月7日~8日に東京ビックサイトで開催された「エコプロ2022」(環境配慮型製品・サービスに関する展示会)を訪れ、出店していたネパリ・バザーロの運営のボランティアを行いました。
5.『LISAチョコレート物語』の作成
1年間の活動の集大成として『LISAチョコレート物語』という冊子を作成し、2023年1月24日に完成しました。調査報告を目的にするのでなく社会的インパクトのある冊子を企図し、手にした人が一人でも多くLISAチョコレートに関心を持ってもらえるPR誌を目指しました。内容は、LISAチョコレートとは、ネパリ・バザーロの概要、インド・沖縄などの紹介、陸前高田現地訪問の様子、LISAチョコレートのラインアップの紹介、学生からのメッセージなどから構成されています。現地訪問でお世話になった陸前高田の「椿のみち」の方から「あまりの完成度に感激しています!文章一文字一文字から皆様がLISAチョコレートやネパリについて本当に一生懸命調べて考えてくださったことが伝わってくる温かい1冊で…!工房の宝物がまた増えました。大切に活用させていただきます!」というお言葉をいただきました。
1年間を終えて、ネパリ・バザーロからは「私達にとっても貴重で刺激的で素晴らしい1年間でした。アッと言う間に過ぎてしまい、もっとご一緒に学び合いたかったと思います。これからもご縁が続きますと嬉しいです」というコメントを頂きました。
学生からは以下の感想が寄せられました。
「新型コロナウイルスの影響もあり現地訪問は難しいと思っていたが、直接伺うことができてとても良かった。初めて大学生らしいことをすることができて嬉しかった。陸前高田フィールドワークを通して防災の重要性を感じた」
「学習では震災当時の実話や復興支援を知識で学び、現地訪問では陸前高田市の現状を知り、自然と人々の熱量に魅了された。現地の方々の生の情報と実体験談をお話しいただいた経験は、私自身の宝物になった。この感動を忘れないように、引き続き陸前高田市に何かしらの形で携りたい」
「1年間かけて、LISAチョコレート、ネパリ・パザーロについて理解を深め、販売促進、冊子作りができたことはとても良い経験になった」
「この1年で一番やり甲斐があり、一番楽しかった授業だった。冊子作りや動画作りが完成し、1年間の集大成に一つ形に残るものができて良かった」
「想像できないほど絶望な状況の中、必死に生きようとしている人たちの話を見聞し、私は1日1日を大切に生きようと何回も思った。同時に、東日本大震災のことをまだ知らない若者に伝える責任が私たちにはあると思う。自然災害の恐ろしさ、命の重みというのを、現地の方が話してくださったお話と共に今後も繋いでいきたい」
「新しい体験や学びが多くあり、とても刺激的な授業だった。座学だけではわからない実際に現地に行くからこそわかること、感じることが数多くあるということを実感した」
「当時はあまり考えることができなかった震災について、人々の想いを知り、考えることができた。過去の経験を未来に引き継いで忘れないことが大切だと思う」