【フィリピンFW2023】フィリピンで起こっている諸問題について学ぶ

【フィリピンFW2023】フィリピンで起こっている諸問題について学ぶ

2023年8月17日から31日までに行われたフィールドワーク(FW)である。

目的としては、フィリピンで起こっている諸問題について学ぶことである。諸問題とは、フィリピン人海外労働者(OFW)の問題、貧困と児童の問題、女性の社会進出の現状、残留日系2世の問題などである。

今回のFWでは、マニラに1週間、ミンダナオ島のダバオに1週間と合計2週間フィリピンに滞在し、毎日朝から夜までたくさんのことを吸収した。

ミンダナオ島に赴く海外研修は聞いたことがないため、引率の大野俊教授の人脈を活かしたとても貴重なFWであった。

主にマニラでOFW、貧困と児童の問題、女性の社会進出を学び、ダバオでは残留日系2世の問題を調査した。

この調査の中で明らかになった大きなことは、これら全ての問題が複雑に繋がっているという事である。

1つ例を紹介すると、貧困と児童の問題がOFW、そして女性の社会進出に繋がっているということである。

マニラで赴いた「カンルンガン・サ・エルマ」は、タガログ語で「避難場所」という意味で、その名の通り、子供を保護している施設であった。

マニラにあるカンルンガン・サ・エルマ

カンルンガン・サ・エルマでは、男の子は6歳から12歳、女の子は6歳から14歳までを受け入れている。ここに来る子供たちは虐待などのトラウマを持っているため、心理面の対応としてアートやダンス、音楽をボランティアアーティストから学び、セラピーを行っている。また、カンルンガン・サ・エルマで10カ月間施設に保護されたあとは、別のシェルターに移る。中には家族の元に戻る子もいて、家庭に戻った後も子供のケアプログラムが用意されていることを学んだ。

こちらの施設で出会った子で印象に残っている子が1人いる。彼女の母親は日本に出稼ぎに来ていて、女の子を親戚に預けて日本に働きに来ている。

しかし親戚から虐待を受け、カンルンガン・サ・エルマで保護されていたのだ。この話から、OFW(フィリピン人海外労働者)の問題は子どもの虐待や貧困にも繋がっているのだと強く感じた。

施設内にある、何が虐待かを学ぶ資料
カンルンガン・サ・エルマの子供たち

OFWは海外で出稼ぎをし、外貨を送り、フィリピンの経済を支えている一方で、このように幼い子どもを残して働きに行く親が多くいて、その子どもたちが虐待を受け、シェルターで保護されている。しかも、母親が働きに行っているため、女性の社会進出をしていると表向きではポジティブにとらえることもできるだろう。しかし、それらすべてのことが複雑に絡み合い、大きな問題となっている。机の上で学んでいた時には見えなかった問題の繋がりが見えた現地調査であった。

ミンダナオ島ダバオでは、ホームステイや現地大学生との交流をしながら、残留日系2世についても学んだ。

ダバオは日本と深い関係のある市である。戦前、満州国になぞられ、「ダバオ国(クォ)」と呼ばれた。日本人はアバカ栽培中心の事業を始めるため、ダバオに入植した。そして現地でバボゴ族の女性と結婚し、日本人とフィリピン人の混血児が多く生まれた歴史がある。

戦時中の混乱の中、無国籍で暮らす日系2世が多くいて、今でも80代、90代になった今もなお日本国籍を求める残留日系2世がいるのだ。(長くなってしまうので詳しくは学科のnoteにて執筆しているため、ぜひそちらを参考にして頂きたい)

実際に92歳の田中愛子さんという日系2世にインタビューし、戦時中の話、戦後の混乱期の話、日本国籍を就籍するまでのお話を伺うことができ、学校では習わない歴史を学ぶ貴重な機会となった。今もなお、日本国籍を求める日系2世のためにできることは何か、と考えるきっかけにもなった。

田中愛子さんにインタビューする学生たち

1泊2日のホームステイでは、フィリピン人の生活に密着し、どんな生活をしているのか交流を通して学んだ。

お世話になったホストファミリーと

クリスチャンが多いフィリピンで、日曜に教会に行く習慣を学ぶこと、ご飯を頂く前はお祈りをささげることなど、ホームステイをしないと分からないことも学ぶことが出来た。そして何より、フィリピン人の温かさに触れ、フィリピンをもっと好きになる体験にもなった。

実際に行かないと見えてこない問題の複雑さを肌で感じる貴重な機会となった。現地で学ぶ大切さを学び、フィールドワークの必要性を参加者全員で共有し合った。