【留学2019】イギリス留学体験記

【留学2019】イギリス留学体験記

【イギリス留学体験記】
留学先:SOAS University of London (ロンドン)
期間:2019年4月〜2020年3月
 
 「二つの文化を持っているということに、どうして幸せだと思わないの?」
ロンドン留学中に、当時自分のアイデンティティに悩んでいた私に、同じ寮に暮らしていた友人がかけてくれた言葉です。
 
私は大学4年生の時に1年間、イギリスのロンドンに留学していました。
もう5年ほど前の話になってしまうのですが、今こうして書きながら当時を思い返してみても、その後の人生が変わってしまうくらい、私に大きな影響を与えた1年だったと思います。

留学を決意するまで

中学生の頃から両親に海外旅行に連れて行ってもらうことがあり、「もっと広い世界を見てみたい」という気持ちがその頃からありました。
また、大学在学中は地球市民学科(以下、地民)で、国内外における社会問題に強く関心があり勉強していたのですが、「地民で学んだことは、国外ではどういう視点で捉えられているのだろう、どういう意見をそれぞれが持っているのだろう」と自分の目で確かめたいという気持ちが強くなりました。
そう思いながらも、当時所属していた他大学のダンスサークルの活動に夢中になり毎日忙しく過ごしていると気づいたら大学3年生の夏が終わり、自分の将来について考える時期になりました。この時もまだ、留学したいという気持ちがあったものの、周りが就職活動を始めているのを見て、「今ここで留学したら、周りに遅れを取ってしまうのではないか」と悩んでいました。
今振り返ってみると、地民にいながらもそんな風に悩んでいたのか、と思うと同時に、いつでも周りと違った道や新しいことに挑戦するのは、大きな勇気がいることだなと思います。
そんな風に迷っている私を見て父が、「長い人生の中で、たったの1年。行かないで後悔するなら、挑戦した方がいい」とありがたくも声をかけてくれ、留学する決断をしました。 

ロンドン、SOASを選んだ理由

私が留学先を決めるにあたって幾つか条件がありました。
 
1.  英語が第一言語である場所
元々英語を学びたい、英語でコミュニケーションがとれるようになりたいと大学入学前から思っていたのもあり、普段の生活でも英語を使う場所に留学しようと決めました。
 
2.  多様なバッググラウンドを持つ人がいる場所
自分が外国籍であると同時に、地民での勉強を通して、様々なアイデンティティやバッググラウンドを持つ人に出会いたいという思いが強く、多様な文化を自分の肌で実際に感じられる場所というポイントも、私が留学先に選ぶ重要な条件でした。
 
3.  語学以外の科目も勉強できる大学/コース
元々英語を学びたかったと言っても、語学を習得するのは留学をしなくても出来てしまうのではないか。また、留学をしようと思った理由の中でもお話した通り、地民で勉強した社会問題について、他の国ではどういう意見があるのか知りたい。このような思いから、語学と同時に社会学などの科目も勉強できるコースを探すことに決めました。
 
4.  アートが身近にある街
元々美術館に展示を観に行ったりすることが好きだったり、デザインがどう社会と結びついているのか興味があったので、デザインやアートが身近にあり、留学中も常に触れられる場所がいいなと考えていました。
 
この全ての条件に当てはまったのが、ロンドンという街と、SOASという大学(ロンドン大学SOAS校)です。
元々SOASは、英文学科の学生が主に行く留学先で、地民からは私が初めであると学科の先生にも、国際留学センターの方にも言われ、他の留学先も勧めてもらいました。しかし、どうしてもこの条件に当てはまるのが当時の私にとってはSOASだけだったため、私の気持ちを押し通しSOASへの留学を決めた記憶があります。
当時は本当に、国際留学センターの方々にだいぶお世話になりました。ありがとうございました。 

SOASでの留学生活

SOASでは、ELAS (English Language and Academic Studies)という、学術英語と科目を勉強するコースに入りました。
1年は3 term に分かれており(1 termにつき3ヶ月くらい)、毎termの終わりに試験とエッセイの提出があります。
英語はレベル別にA1,2,3,4 と分かれており、私はA2からのスタートで、毎term 1つずつ上のレベルのクラスに進みました。英語のクラスでは主に、英語でのエッセイの書き方やディスカッション、プレゼンテーションの方法を学びます。
実は私は最近、ロンドンで別の大学の修士課程を修了したのですが、ここで学んだこと、特にエッセイの書き方は、大学院での勉強にもとても役に立ちました。
 
Academic studies では、Humanities, International business, Social scienceの3つの科目から1科目毎term選択することができ、それぞれの分野の勉強をします。
私はHumanitiesを選択し、文化人類学や宗教学を学びました。
科目授業は、まず先生によるレクチャーがあり、その週のトピックについて基本的なことを学びます。その次の日くらいに、そのレクチャーを元に先生から1つテーマ/質問が与えられ、クラス全体で輪になってディスカッションをします。多い時は30人くらいでディスカッションをした日もあります。その後にまた別の日に、少人数のグループに分かれ、同じトピックの今度は違う与えられた質問に対して、賛成・反対に分かれディベートします。
ディスカッションやディベートに積極的に参加し、自分の意見を述べることに対しては、地民で慣れていたのであまり抵抗感はなかったのですが、最初は先生やコースメイトが話している内容が理解できなかったり、英語で自分の意見をその場でまとめることが難しく、毎回の授業後悔しい思いをしていました。それと同時に、様々なバッググラウンドを持ったコースメイトとの会話から、今まで自分が見えていなかった考え方を学ぶことができ、自分の視野が大きく広がったとてもいい経験でした。
 
英語と科目の授業のほかに別で、オプショナルのモジュールとして「アート」の授業を取っていました。アートと言っても、絵を描いたり何か制作したりするのではなく、毎週ロンドンにあるギャラリーや博物館に行き展示されている作品を鑑賞しながら意見を交換し合うという授業です。
因みに、ロンドンにあるほぼ全ての美術館や博物館の常設展は無料で鑑賞できます。誰でもどんな時でも、すぐに芸術に触れられる点がロンドンの良いところの1つだと思います。
この授業は留学中1年間全てのtermで取っていたのですが、大きい美術館や小さいギャラリーまで沢山の場所で色々な作品を観ることができ、様々な表現方法があることを学べた、私にとってまた違う場面で視野が広がった素晴らしい経験だったと思います。 

学生寮

この留学期間中SOASから歩いて3分くらいの場所にある学生寮で生活していました。この寮の周りは大学が多く集まる地域で、SOASだけでなく他の大学の生徒も大勢住んでおり、大学外でも沢山友達が出来た場所です。
寮の地下に共有のキッチンがあり、そこでよく寮の友達と一緒にご飯を作ったり、誰かの誕生日には一緒にお祝いをしたり、それぞれ1品ずつ作って持ち寄るPot luck partyもよくしました。誰かと共にご飯を食べることは、世界共通のコミュニケーション方法の1つなのか、毎回のPot luckでそれぞれの国や地域の料理を一緒に作ったり食べたりしながら、仲を深めることができました。
他にも一緒にピクニックをしたり、お出掛けしたりと、ここでの友達と過ごした時間はこの1年間の留学生活の中で最もかけがえのない思い出の1つになったと思います。
因みに、ロンドンで最初に出来た友達は、この寮の隣の部屋の子だったのですが、彼女とは5年経った今でも定期的に会っています。

学生寮にて、帰国前最後に友人達と一緒にご飯を食べた時に撮った1枚

SOAS以外での勉強

留学期間中はサークル活動には参加せず、ロンドンにある芸術大学のショートコースに放課後や夏休みなどの長期休み期間に通っていました。元々アートに興味があったことや、デザインと社会の関係性に関心があったため、芸術が身近にあるロンドンで何か学べることはないかなと思っていた時に、当時SOASで受けていたアートの授業の教授がロンドンにある芸術大学出身で、その大学に誰でも学べるショートコースがあると紹介してくださいました。
私は主に、グラフィックデザインのコースに参加し、タイポグラフィーやポスターのデザイン、パッケージデザインなど様々なジャンルのデザインを学びました。また、どのコースも机上で学ぶだけではなく、実際に自分でデザインし、先生からフィードバックをもらう授業だったので、今までデザインの経験が全くなかった私は、最初はとても緊張しました。しかしそれと同時に、自分の頭の中で想像しているものを実際に形にして表現する楽しさに気づけることが出来ました。他にも、1週間で100のドローイングをするコースなどにも参加したのですが、SOASと同様、どのコースにも様々なバックグラウンドを持つ人が集まり、人によって物の見方や表現の仕方が多様で、ここでも自分では気づけなかった考え方を知ることができた素晴らしい経験でした。

椅子で椅子を描く授業

留学生活は、人それぞれ過ごし方が違うと思いますし、絶対に多くのことに挑戦しなければいけないということはないと思います。そもそも留学自体が大きい挑戦であると思いますし。しかし、留学先のコース以外の外に出てみるのも、自分が知らなかった文化やその街、また自分自身の一面にも気づけたり、多様な人に出会えたりできるいい機会であると思います。もしこの体験記を読んでくださる方の中に、これから留学を考えていたり、出発する準備をしている方がいらっしゃいましたら、どのような留学生活を過ごしたいか、留学先で何をしたいかについて考えてみる良いきっかけになれれば嬉しいです。

最後に

 SOASのスローガンとして、Meet the World という言葉があります。まさしくこの言葉の通り、ロンドンで過ごしたこの1年間の留学生活で私は、多様な人や文化、考え方に出会い、自分の世界が広がった時間でした。
ある日、同じ寮の友達に、外国籍として日本で生まれ育ち自分のアイデンティティに悩んでいる事を話した時、「二つの文化を持っているということに、どうして幸せだと思わないの?」と彼女が言いました。今まで自分自身のアイデンティティに対してネガティブな気持ちしか持っていなかったことに気づいた瞬間でした。今考えてみると彼女の言葉は、ロンドンという毎日多様な人や文化に出会う街を象徴している言葉だなと思います。
実はこの1年間がきっかけで、その後またロンドンに戻ることになるのですが、そのことについては、また別の機会でお話しできたらなと思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
 
(地球市民学科卒業生 K.K)

留学最終日にSOASで撮った1枚